2016
01.29

【テクニカルコラム】~第2回ジャイロセンサー~ 後編

メンテナンス日記, お役立ち情報

【テクニカルコラム・用語解説とロボット技術から見たドローンの未来】 ~第2回ジャイロセンサー~ 後編

こんにちは!ロボットエンジニアの引間奈緒子です。前回はジャイロセンサーと加速度センサーについてお話ししました。 今回は9軸センサーとこれからのドローンに関してお話します。

引間です。自作した二足歩行ロボット「メカくまたろう」と。

引間です。自作した二足歩行ロボット「メカくまたろう」と。

■地磁気センサー

9軸センサーとは一般的に、「3軸ジャイロセンサー」と「3軸加速度センサー」に「3軸地磁気センサー(電子コンパス)」が加わったものを言います。地磁気センサーはドローンが方位磁石を持って動くようなイメージです。ざっくり言うと、自分が地球に対してどこにいるのかがおおよそわかるようになります。ホームボタンを押すと自動的にホームに戻ってくる機能はこのセンサーを使用して制御されています。

地磁気センサーは私も自律型の二足歩行ロボットに搭載し、ロボットが自分で考えて指定した場所まで自動的に移動するという機体を製作したことがありますが、これがまた難しかったですね… センサーの価格によって精度や外乱からの影響が変わりますので一概には言えませんが、大きな磁力を発生する場所では地磁気センサーの出力値が狂ってしまいます。ロボットでよく聞く話では、冷蔵庫から発生される磁力の影響で、トコトコとロボットが冷蔵庫に向かって歩いてしまう…なんてことがありました。(それからそのロボットは「くいしんぼう」と呼ばれていましたが・笑)
そのため、ドローンも低価格帯の機種では同じようなことが考えられると予想されますので、地磁気が乱れるような環境では正確にホームに戻って来ないこともあるということを頭に入れて操縦を楽しまれたほうがいいかもしれません。

■これからのドローンに必要とされる「感覚」

上記でお話したように、ひとつのセンサーだけでは確実ではありません。そのため、複数の種類のセンサーを複合的に使用し確実な動作が出来るよう精度をあげていく必要があります。9軸センサーを搭載しているドローンは、人間で例えていうと「触覚」が大きく発達している状態にありますが、ただ、これだけでは確実に動作させることが出来ません。
そのためドローンもロボットと同じように、これからは「視覚」を補うセンサーの開発が発展していくと思います。 空撮に使用しているカメラとは別に画像処理用のカメラを搭載し、障害物認識と迂回経路計算をおこなっていくでしょう。 二足歩行ロボットに比べ、ドローンは移動スピードが速いものですからハイレベルな技術が必要となると思いますが、鳥や昆虫の研究を応用し「絶対にぶつからないドローン」が生まれると思います。

これが完成すると、いよいよ宅配業者の「ドローンでお届け!」が現実的になるのでしょう。とても楽しみですね!

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引間 奈緒子
テディベアロボットをはじめとした小型二足歩行ロボットの設計・加工・開発をおこなう数少ない女性ロボットエンジニアとして活躍するメカオタク。二足歩行ロボットキット日本国内No.1シェアのロボットメーカー近藤科学株式会社(KONDO/KO PROPO)での勤務を経て2013年独立「naoko-robot」を開業。ぬいぐるみを着たロボットの製作に特化し、自治体や企業のマスコットロボットをオーダーメイドで製作している。 代表作は「いくま」「くまたろう」「トーイ」 趣味はプロレス観戦と自衛隊イベント巡り。好きな航空機:固定翼はUS-2、回転翼はCH-47。