2015
12.29

【テクニカルコラム】~第1回ジャイロセンサー~ 前編

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【テクニカルコラム・用語解説とロボット技術から見たドローンの未来】

~第1回ジャイロセンサー~ 前編

はじめまして、二足歩行ロボットを造り始めて12年・ロボットエンジニアの引間奈緒子(ひきまなおこ)と申します。

ドローンは「空飛ぶロボット」とも呼ばれロボットの一部と分類されており、これまでにロボット分野で開発された様々な技術が次々とドローンに搭載されていくことが予測されています。このコーナーではロボットとドローンに共通する技術の解説や、ロボットエンジニアの私が見るドローンの未来をお話ししていきたいと思っています。

さて!私もドローンはまだまだド素人ですが、ビギナーさんやこのサイトの読者に多い女性は、日常では聞き慣れない用語が多く苦戦している方も多いと思います。用語を正しく理解して「お!この人わかってるな!」と一目置かれる存在になりましょう!
さて、最初に解説するドローン用語は「ジャイロ」!!

↑私の手持ちのジャイロ(ロボット用1軸ジャイロ)

これはロボットには欠かせないセンサーです。デジタルカメラやスマートフォンなどにも搭載されていますので、最近ではよく耳にする言葉なのではないでしょうか?ですがこのジャイロセンサー、よく勘違いされていることが多いセンサーでもあります。ジャイロセンサーは何を測るものですか? と聞かれたときに「傾き」とお答えになる方が非常に多いです・・・

 

それはものすごく残念というか。。。惜しいです! 結果的に「傾き(のようなもの)」を求めるためのセンサーではあるのですが、それはあくまでも他のセンサー値も使って色々と演算した結果に過ぎません。

では、実際にジャイロセンサーが測定しているものが何かと言いますと・・・答えは「角速度(かくそくど)」です。

角速度とは簡単に言うと「物体が回転する速度すなわち単位時間あたりの角度移動量」のことを言います。簡単にと言いつつ何やら物理の授業のような言葉が出てきてしまいましたが、ドローンで例えて言うと、ドローンが安定して飛んでいたときに風の影響か何かでグラッと体勢を崩したとしますよね。そのとき、グラッと動いた量をジャイロセンサーで知ることが出来ます。そのため、また安定飛行するために体勢を立て直すにはその動いた分だけ逆に動かしてあげればいいというわけです。(人間もバランスを崩したら立て直そうと反対に体重をかけますよネ。それと同じです。) 従って、ジャイロセンサーは「傾き」というわけではなく、1秒間あたりに移動する角度(量)と覚えて下さい。
ちなみに傾きは別のセンサーで検知することができます。「加速度センサー」という重力加速度を利用し体勢の位置を検知するセンサーがあります。よくドローンで「6軸センサー搭載!」といったような宣伝フレーズがあると思いますが、それは3軸のジャイロセンサーと、3軸の加速度センサーが搭載されたセンサーのことです。ここでの3軸とは、ヨー軸、ピッチ軸、ロール軸の3つです。
この呼び方はロボットや飛行機も同じですので、ロボットを例に図を用意しました。


わかりやすい覚え方としては、野球などでピッチャーがボールを投げるとき、腕を振り下ろすような形で投げますよね。その投げる方向すなわちセンサーの基準に対して縦方向の回転軸が「ピッチ軸」です。ロール軸は横方向の回転軸なのですが、体操などで側転することをローリングと言いますので、それをイメージするとわかりやすいかと思います。そして最後に残った垂直方向の回転軸を「ヨー軸」と覚えてもらえればわかりやすいかと思いますよ!
…なんだか初回から長くなってしまいました。次回は9軸センサーとセンサーからみるドローンの未来についてお話していきます。

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引間 奈緒子
テディベアロボットをはじめとした小型二足歩行ロボットの設計・加工・開発をおこなう数少ない女性ロボットエンジニアとして活躍するメカオタク。二足歩行ロボットキット日本国内No.1シェアのロボットメーカー近藤科学株式会社(KONDO/KO PROPO)での勤務を経て2013年独立「naoko-robot」を開業。ぬいぐるみを着たロボットの製作に特化し、自治体や企業のマスコットロボットをオーダーメイドで製作している。 代表作は「いくま」「くまたろう」「トーイ」 趣味はプロレス観戦と自衛隊イベント巡り。好きな航空機:固定翼はUS-2、回転翼はCH-47。